誰も知らない俺だけの記憶
いつの事か、覚えてない。
「ーー! 帰ろう」
「あぁ。そうだな」
あいつに名前を呼ばれる、それが、心地良かった。
あいつのおかげで、嫌いだった自分の名前が好きになった。
「ーー!」「ーー!」「ーー?」
いつも、変わらない笑顔が向けられていた。
ーー『幸せただ』
そう思えていた。
でもーー
★
「ぁ、おいッッ!!」
キイイイイイイイイッーー
耳障りな甲高い音が、
辺り一面に散らばる紅い液体が、
夏のように暑い炎天下が、
俺とあいつに間を、つくる。
「は、はは… よかった……ーー」
「なんで……なんで、んなことしたんだよ…」
視界が、白んでいく。
あいつは、無理に笑った。
「ーーーー、ーーーー。」