思春期男子の青春

断じて、恭は男子ではない。

誰も知らない俺だけの記憶

いつの事か、覚えてない。

「ーー! 帰ろう」

「あぁ。そうだな」

あいつに名前を呼ばれる、それが、心地良かった。

あいつのおかげで、嫌いだった自分の名前が好きになった。

「ーー!」「ーー!」「ーー?」

いつも、変わらない笑顔が向けられていた。

ーー『幸せただ』

そう思えていた。

でもーー

「ぁ、おいッッ!!」

キイイイイイイイイッーー

耳障りな甲高い音が、

辺り一面に散らばる紅い液体が、

夏のように暑い炎天下が、

俺とあいつに間を、つくる。

「は、はは… よかった……ーー」

「なんで……なんで、んなことしたんだよ…」

視界が、白んでいく。

あいつは、無理に笑った。

「ーーーー、ーーーー。」